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 私はそうたくさんの種類のモーターサイクルに乗った経験はありません。本気で乗ったモーターサイクルはMOTO GUZZIだけと言ってもよいでしょう。しかし私はほかのモーターサイクルに乗ってみたいとは思いません。MOTO GUZZIに満足しています。私の感覚にぴったり合うのです。感覚というのは主観的で個人的なものです。しかし、思想や美意識など抽象的感覚における主観は客観の内在化であるのに比べ、モーターサイクルに乗ったときの感覚などの身体感覚は、純粋主観ともいえる、その人の完全に個人的なものだと思います。その純粋主観の世界で私の感覚を満足させてくれるMOTO GUZZIというモーターサイクルの存在は得難く貴重なものです。
 人の生き甲斐は、さまざまな危険を乗り越え目標を達成することにあると思いますが、MOTO GUZZIに乗ることは大げさに言えばそれに近い経験ができるというところに、その魅力があるように思います。モーターサイクルに乗ることは危険なことです。MOTO GUZZIはそれを安全だなんて錯覚させることはありません。乗っている間、適度な緊張から解放してくれることはありません。危険だということをいつも知らせてくれ、その危険を乗り越えようとしたとき、忠実に反応してくれるのがMOTO GUZZIというモーターサイクルなのです。そこにMOTO GUZZIに乗る歓びがあります。きちんと整備すれば最大限の能力が発揮され、そのパフォーマンスは極上です。MOTO GUZZIは私の生活に大きな楽しみを与え続けてくれています。

 MOTO GUZZIに感謝すべきもうひとつのことは、感覚を同じくする多くの人と知り会えたことです。モーターサイクルの好みのような、ごく主観的で基本的な感覚が同じということは、他の部分でも共通する部分が数多くあるように思います。単純に言えばMOTO GUZZIが好きな人なら他のいろいろな趣味もかなり合う、と言うことだろうと思います。そういう、いわゆる「気が合う」人たちと知り合え、一緒に走れる愉しみは他の何ものにもかえ難いものがあります。あまりに気が合いすぎてツーリングの折り、サービスエリアで思わず2時間も語ってしまうこともあります。それはそれでひとつの醍醐味です。

 MOTO GUZZI Owners Clubという団体は、かなり風変わりな人たちの団体だろうと思います。そしてその風変わりさを大事にし、モーターサイクルに乗ることを起点として、真の歓び、真の愉しみを気負わず追求して行くことに、この会の存在意義があるのではないでしょうか。そのために、リベラルで、メンバーひとり一人が自分の行動に責任を持ち、お互いに見守りつつ自分の道を走る、そういう会であり続けたいと思います。

 MOTO GUZZIというモーターサイクルに感謝し、MOTO GUZZIを媒介として自分の豊かな時間が少しでも長くあるように、MOTO GUZZI Owners Clubを活用しようではありませんか。

2000年11月吉日

 その日東京地方に梅雨明けの宣言がなされ、前日までとはうって変わって雲一つ無い素晴らしい天気でした。

 昭和六十年七月十五日、場所は新宿京王プラザホテル、SEIMM MOTO GUZZI S.p.a.* のExport Sales ManagerのG.R.ERMELLINI氏がイタリアより来日され、当時日本総輸入元の「諸井敬商事株式会社」主催により全国代理店を招いてのモトグッチ ディラーズ ミーティングの催しがございました。その時にわたくし共モトグッチ オーナー十数名もお招きに預かり同席させていただきましたが、ミーティング終了後諸井敬氏よりこれを機会にモトグッチのクラブを創ってほしいとのお話がありました。その後数名が発起人となり会発足に向かっての打ち合わせをかさね、会の名称、役員の選出、それに会則を定めまして昭和六十年八月一日を以ってモトグッチ オーナーズ クラブ オブ ジャパンの名称で発足致しました。

 発足当時はゼロから始めましたので、クラブエンブレムを作るにもツーリングウェア一つ作るにも大変苦労をしましたが、今にして思えば懐かしい思い出ばかりです。クラブ発足以来幾星霜を経てここに無事十五年を迎える事ができましたが、これには役員の方々のご苦労もさることながら会員の皆様方の温かいご協力があったればこそと思います。当クラブの歴史の断片はイタリア・モトグッチ社にも記録として残っており、この時代にこのクラブの会長として過ごせたことを名誉に感じると共に、自身の人生の中での貴重な財産として受け止めております。
 又、オーナーズ クラブが今日まで節度あるクラブとして円滑に推移してきた背景には志賀氏(株式会社 モトグッチ リパラーレ)の多岐に渡っての多大なるご尽力があった事をこの場をお借りして付記させていただくと共に感謝の意をのべさせていただきます。

 さて私は昨年(平成十一年)をもちまして会長職を離れ、ミレニアムを迎えるクラブの更なる発展を託し前副会長の伊達氏に引き継いでいただきましたが、この度新会長の元でオーナーズクラブのホームページ開設の運びとなり、誠に慶賀の極みであります。この新たなる展開も含めて今後もオーナーズクラブの活躍を祈念いたしております。
 そしてどうかモトグッチオーナーズクラブと共に日本の多くの方々が、モトグッチ車を末永く愛して下さることを切に願いつつ筆を置かせていただきます。
*1989年 GBM S.p.A. に社名変更
*1996年 MOTO GUZZI S.p.A. に社名変更
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