- 2020.11.04 Wednesday
- penso che・・・・・コラムなど
先日のことラジオでこのコロナ禍の中ならではの製品の紹介をしていました。幕張メッセで開催された「医療と介護の総合展」に出展されていた除菌のためのオゾン水の生成機です。アルコールも塩素も使わずに除菌ができ、しかも使用後に毒性の残留物がなく、インフルエンザウィルスの不活化も確認されていると話されていました。ラジオ番組のスタッフが試しに手を洗ってみたら肌がサラサラになったと・・・それは皮脂がオゾンによって分解されたからという解説でした。へえ〜。ただし一般家庭で買えるような価格帯じゃありませんでしたので、ここは普及型の登場が待たれます。
オゾンは分子式でO₃、分子式O₂の酸素分子に酸素原子Oが加わったものです。作業をしながら聞いていたのですが、このオゾン0₃はわりとたやすくO₂とOにわかれるそうで、このわかれた酸素原子Oが強力で、菌や汚れなどの元と反応して菌や汚れや匂いなどを消すという解説だったように思います。そしてオゾン水は飲んでも害は無いが、オゾンガスは吸ったら危険というお話もあって、もう少し詳しく聞きたかったなと思うところでありました。
そういえばペットの匂いを取るオゾン発生器などの商品を見たことがありました。試しにオゾンでネット検索してみると除菌・脱臭などのたくさんの製品が見つかります。ですが私の仕事柄、オゾンと聞くとどうしても悪い影響のほうが頭をよぎるのです。まずはゴム製品のオゾンクラックという言葉を聞いたことありませんでしょうか?また皆さまのモトグッチのエンジン前部のオルタネーターカバー(比較的新しいモデルは除く)の下部にベロのような突起があることにお気づきかと思いますがこれもオゾンと関係があります。
オゾンは紫外線(太陽光)や放射線や高速電子の衝突などによって発生します。私たちグッチスタの身近なシチュエーションとしては、ブラシを有した発電機やモーターが作動した際やポイント式点火装置のコンタクトブレーカー(ポイント)開閉により生じる放電により空気中の酸素からオゾンを作り出します。
こういうプロセスです↓
3つの酸素分子のうち「O₂ O₂ O₂」
1つが放電を受け2つの酸素原子に分かれ「O₂ O O O₂」
残り2つの酸素分子と合体してオゾン2つに「O₃ O₃」
そのため自動車のオルタネーターやデストリビューターなどは密封されずに外気と流通があるよう設計されています。モトグッチにおいては例えばV7や850ルマンなどを見てもオルタネーターカバーの下部にベロが出ていて空気が流通するようになっています。水がかかりやすいエンジン前部で中には電気部品があるのだから密閉したくなるもんですがそうはなっていません。そしてその後ルマン2からはフランジも追加されて空気の窓が増やされました。より空気の循環を多くして、もしかしたらオゾン対策だけでなく放熱効果も期待したのかもしれません。デストリビューターもモトグッチの場合、上部カバーは雨などが入らないよう密閉されていますが裏側に通気口が開いています。
こういった自動車関連のオゾン対策はいつごろから始まったんでしょう? 古くは(の一例ですが)1960年代から販売が始まったSUZUKIフロンテではデストリビューターにエアクリーナーケースからパイプが繋げられ、エンジンの負圧によってデストリビューター内の空気を積極的に入れ替えようとしていたそうです。
同時代のモトグッチは単気筒・チェーンドライブのモデルが主流ですがコンタクトブレーカーが内蔵されている側のカバーも通気があります。さらにさらに、コンタクトブレーカーが独立してクランクケースの上に乗っていた戦前の単気筒モデルでさえコンタクトブレーカーのカバーにしっかり穴が開けられています。オゾンは1785年に発見され、早くからオゾン生成に電気(電子?)との因果にも目が向けられていたようですから、モトグッチの最初期のモデルに反映されているとしてもうなずけます。
ところでなぜオゾンがあってはいけないのか?
まずオゾンによる除菌・脱臭に話を戻します。どうしてオゾンに除菌・脱臭(漂白も)の効果があるのでしょう。前にオゾンはたやすく酸素分子O₂と酸素原子Oに分離すると書きましたが、この酸素原子Oが菌や匂いのもとを、同様に金属やゴムなども攻撃します。攻撃なんて言ってますが酸素原子Oに意思があるわけではないので、目標を定めてあれこれしているのではありません。オゾンから解き放たれた酸素原子Oがたまたまそこにあるものと反応しているということでしょう。酸化させているわけですね。
酸化によって細菌の細胞壁を破壊して死滅させたり、酸化によって匂いの成分を分解したり、モトグッチ関連では酸化によって金属を腐食してコンタクトブレーカーなど接点の導通不良を起こしたり、酸化によってゴムの結合を切断してタイヤ表面にクラックを生じさせるのです。
もう何年も前のことですが、あるタイヤメーカーのあるモデルでオゾンクラックとおぼしきトラブルが連発したことがありました。最初はおひとりのお客さまからクレームがあり、タイヤワックスが原因でクラックが生じることがあるのでその点をお客さまに確認しつつ、メーカーサイドとも相談のうえタイヤを交換させていただいたのですが、その後もちょくちょくクラックが発生したのでした。オゾンクラックだったのなら、もしかしたら通気の悪い場所に大型コンプレッサーかなにかと一緒に保管されていたのでしょうか。その後こちらのメーカーのタイヤは使わなくなってしまいました。クレームに対応はちゃんとしてくださったのですが、余分に幾度もタイヤ交換しなければならないのもどうかと思いまして・・・・・。
役にも立てば害も為すオゾンですが、濃度によって影響の度合いが違います。濃度が管理されたオゾン関連製品に危険はないことを一応最後に書かせていただきます。
massi