スプラインの異常磨耗
- 2009.08.01 Saturday
- oggi・・・・毎日のこと・様々なこと
画像をご覧ください。なんの部品かわかりますか?
鋭く尖っていて・・・・・スパーギア?・・・・・ではありません!
これは先日整備に入った850ルマンのものです。答えはリアホイールに組み込まれているドライブフランジ。トランスミッション→→ドライブ・シャフト→→ファイナル・ミッションと伝えられてきた駆動力で、いよいよホイールを回そうとする部分です。
次が正常な状態のドライブフランジです。角断面のスプラインが切ってあるのがおわかりになるでしょう。スプラインというのは「軸周囲に軸方向につけてある溝(山)」であって、相手側との回転のズレを生じさせないためのもの。当然、高加重に耐える形状でなければなりません。
最初の画像のスプラインは異常磨耗の結果、トンガッてしまいましたのでもう使用できません。
なぜこんなことになったのか?
恐らく低回転(エンジン回転)で走っていたのでしょう。高いギアで、低い回転で、‘ツインらしさ’を味わっていたためだと考えます。低回転で走ると大きなトルク変動がここまで伝わってしまうのです。トランスミッションやファイナルミッションのギアは、このスプラインのようなクリアランスがないので偏磨耗は起きにくいのですが、各ベアリングには悪影響が出ると考えられます。
「エンジンのトルク変動がホイールのスプラインを削ってゆく」ことを実感としてつかめない方はセンタースタンドを立ててエンジンをかけ、1速2速3速と低回転(アイドリング〜2000rpm以下程度)でホイールを回してみてください。ガッシャガッシャとぎこちなく回る様子を見ることができます。その時まさにスプラインが順方向と逆方向と交互に叩かれているのです。・・・・もちろんフロントブレーキをかける、クラッチを切る準備をするなど安全措置を忘れずに。
低回転走行(不適正なギアの選択)はエンジン各部にも環境にもダメージを与えます。関連として下記の記事等も改めてご覧いただければ幸いです。
エンジンRPMと油圧
私も趣味でオートバイに乗っておりますので、トルク変動や脈動を「迫力」として面白く感じる気持ちはよくわかるのではありますが、それでもやってはマズイことがあります。
ちなみに低回転がダメだから「高回転=いつでも高速走行」ではありません。はっきりと小気味よい加速ののち、場面にそくしたギア選択と速度で巡航を。
もう一度、問題のスプラインをアップで見てみましょう。
よく見ると山の右側より左側のほうが大きく磨耗しています。先述のトルク変動があるとしても、ほぼ均等に磨耗するのではないでしょうか?ちなみに走行中に駆動がかかっているのは右側なのです。
してみるとトルク変動とは別に、減速時に過大な力がかかっていたようです。その場合、回転逆方向にストレスがかかるのです。これはひょっとすると、‘エンジンブレーキ’と称してシフトを落として回転もあわせずにクラッチをつなぐというような乱暴なことをされていたのかも知れません。
多くの方には言わずもがなだとは思いますが、減速はあくまでブレーキで!
エンジンブレーキは簡単に言うと、長い降り坂などで車速が上がり過ぎないようにスロットルオフにしておくことです。先が見えていてのんびりした減速のために使うエンジンブレーキもせいぜいスロットルオフするまでのことです。
日ごろ不調・故障の理由として、「オーナーの乗り方が悪いから」よりも「整備不良・調整不足」の比率のほうが断然高いと考え、皆様にもそのようにご説明していますが、今回は乗り方にかなり問題があったようです。
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