カムプロフィールを尊重するには
- 2009.11.21 Saturday
- oggi・・・・毎日のこと・様々なこと
某オートバイ雑誌をパラパラとめくっていたら飛び込んできたのが「ヨシムラの新しいカムシャフト」という文字でした。
「画期的なレース用カムシャフト」という言葉も見えます。あのヨシムラが開発となるとどんなすごいものだろう?とやや興奮気味に記事を読み始めたのです。そしてそれは・・・・・フライホイールを備えたカムシャフトだったのです。
正直「ありゃりゃっ?」と思ってしまいました。なぜならそれ自体は目新しい技術ではないからなのです。
カムシャフトの回転速度はカムの頂点を越えたあとはバルブスプリングの反力を受けて増速してしまうので、実はカムシャフトは一定速度で回転できていないのです。カムチェーンやカムギアによりクランクシャフトからの駆動を受けて高速回転しているカムシャフトも実はチェーンの遊びやギアのバックラッシュの分だけギクシャクと回っているわけです。そこにフライホイールを設けてその慣性によりカムシャフトの増減速を抑制しようという狙いなのです。
さて、記事のなかには「4輪では量産車に使われているが2輪では珍しい」と書かれています。・・・・・・・・珍しい、のかもしれないけれど、やっておりますモトグッチは!(ここから先は自慢になってしまうわけですが・・・)
1956年から10年間生産されたロードラ(ひばり)は大きく目立つフライホイールを備えたカムシャフトを採用していたのです。「テクニカルレポート12、カムシャフトの駆動と作動は」を読んでいただいた方は思い出していただけましたか
ロードラはカルロ・グッチが最後に設計したモトグッチです。オーバーヘッドカムシャフトはモトグッチでは既に1940年代から採用されていますが、そのどれもがギア駆動でした。モトグッチで恐らく初めて長いカムチェーンで駆動するSOHCエンジンを造るにあたり、カムシャフトにフライホイールを備えることに着眼したカルロ・グッチはさすがに常勝エンジンを生み出し続けたエンジニアです。
もちろんカムチェーンテンシュナーは存在しており、しかもローラー式などではなくスリッパー型のものを採用しているのですが、それで満足することなくフライホイールを採用するに至ったわけですからその過程でどんな物語があったのか興味深いところです。
ところで、なにも私は「ヨシムラはそんなことも知らなかったのか!?」と目くじらを立てて書いているつもりはありません。先に触れたように「4輪では・・・・」という発言もあるとおりで知らなかったはずがありません。この記事は「8耐に勝ったヨシムラ」にスポットを当てたいわけですから、当然ながらヨソとの違いをクローズアップしたのでしょう。
でもヨシムラサイドが「いやあ画期的だなんてそんなに大げさにされても・・・」と恥ずかしげに頭をかく姿が見えてくるような気がします。私共もいろんな取材をしていただいた際、思わぬところが割愛されたり脚色されたりして後に「おやおや」ということがままあるのです。
ただ、まったく画期的ではないわけではなく、レーシングエンジンに採用した点を画期的と言っているのでしょう。ホンダが96年からGPにVツインマシンNSR500Vを投入した際と同質の英智を感じます(これも大げさですか?)。
ヨシムラが今までこのタイプのカムシャフトを採用しなかったのは、誰でも気づくことですが回転マスの増加を嫌ってということが大きいでしょう。誌面でもそのことに質問が及んでいます。フライホイールの重量分だけピックアップが悪くなるはずなのです。それに応えて「ガサツさがなくなるのがいい」というライダーの感想が紹介されていました。
そうなんです。カムシャフトとクランクシャフトが真にリンクしたとき、同じエンジンとは思えないほど低回転では確実さが、加速ではスムーズさが、目に見えて良くなるのです。せっかく研ぎ澄まされたカムプロフィールが初めて活かされて「ふんい気のよい回り方」を始めるわけです。
モトグッチの場合でも、ほんのわずかなカムチェーンの遊びを解消するだけで「ふんい気のよい回り方」を始めます。何万キロか走ってカムチェーンノイズを感じるようになったら、騙されたと思ってチェーンとテンショナーを新しいものに換えてみてください。わずかな狂いがいかに大きいかわかります。
テンショナーはリパラーレ推奨品がありますのでモトグッチをお持ちくださればありがたきしあわせです。
ついでながら、わずかな狂いはバルブクリアランスや点火時期やインジェクションなどの調整も同様で、明らかな違いが体感できますので丁寧に確実に調整してみてください。
mas
EICMA 新世代モデル・・・・・
- 2009.11.12 Thursday
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