ガソリンタンク
- 2020.05.23 Saturday
- moto・・・・モトグッチ・整備など
このコロナ自粛の中モトグッチリパラーレも営業自粛したり時短勤務になったりとしたのでゴールデンウィーク+αの時間ができまして、かねてから考えていた自宅の災害対策を進めたりしておりました。たとえば昨年の令和元年台風のとき多くの方がやったのではと思いますが窓ガラスに段ボール等を貼って割れたガラスの飛散防止がそのひとつ。強風や台風の予報のたびに段ボール等をかき集めるのも手間なので(気候はますます荒れて強風の頻度もあがるかもしれませんし)、ホームセンターでプラスチック段ボールを買ってきて窓のサイズに合わせてカットしました。
その他いろいろやったのですが、少々出費を伴ってしまったのはポータブル発電機の購入です。停電時に地域でガソリンを持ち寄ってスマホ充電スポットを作れたり、真夏の停電時はせめて扇風機を回したら避暑寄り合い所を作れるのではと思いまして。
ということで届いた発電機の試運転も無事済ませて、しまい込む前にタンクのガソリンを抜いて、さらにガス欠ストップするまで発電機を回しました。一度カバーもあけて内部のガソリンも全部抜けるかどうかチェックしようと思っています。毎週使うものならともかく次にいつ使うかすらわからないので、やはりガソリンの入れっぱなしはよくありませんから。
さて、ここ数年と言ってよいでしょうか、インジェクション車(もちろんモトグッチの)の燃料フィルターの詰まりや燃料ポンプの故障というトラブルが散見されるようになりました。それらフィルターの中には錆びのような粒子状物質が詰まっていたり、ポンプにはフィルターを通り抜けてしまった微細な粒子状物質が堆積して回らなくなっているものもありました。フィルターは定期交換部品ですからまだよいとして、ポンプの交換は痛い出費です。
この原因は・・・・・よく言われがちなのは?「タンクに水が入って錆びた」。そうですね、モトグッチもインジェクション車からでしたか、エアプレーンタイプのタンクキャップが使われ始めて、その初期のころのキャップは開閉時に水が入りやすく、入りやすいがゆえに設けられていた水抜き用のドレンパイプも詰まってしまっていてタンク内に水が入ったという事例もありました。その後改善されて水が入りにくい形状のキャップが使われるようになりました。
ただ、「粒子状物質」と変な書き方をしたのはわけがありまして、粒子状物質は錆びだけではなく、色からして錆びではないと見受けられるものもあるからなのです。そして実はそれは、ガソリンがイタズラしたことが原因である可能性があるのです。
「タンクの中が錆びないように常にガソリン満タンにしておく」という方はいらっしゃると思います。でもガソリンも長期放置しておくと劣化するのです。なにが起きるのかと言いますと、酸化して蟻酸や酢酸に変化して金属に対して攻撃性をもち、それによってガソリンタンク内部が腐食して粒子状物質(以下、腐食カスとしましょう笑)を生じさせていたのです。長期というのがいかほどのものか?またその他環境などの条件にも左右されるのかもしれませんが、まず、そういうことが起きるのだとご理解ください。トラブル防止のためのガソリン満タンも度が過ぎると結局錆びによるものと同様なトラブルを招くとは皮肉な話です。
また、タンクの錆び対策で水抜き剤を入れることがありますが、書きましたように錆びに思えても違うということがあります。水抜き剤とガソリン酸化防止剤(兼洗浄剤)を混同・誤用してはいけません。対策するにしてもご自分が向き合っているのが水による錆びなのか?腐食によるものなのか?見定めなくてはなりません。
実は中古車購入後に不調が起きてお見えになったお客様のインジェクション車でこのようなトラブルが起きていたことがあります。購入後すぐでもあり、もしかしたら前オーナーは不調に見舞われ、その原因が燃料系の詰まりと気づかずにあきらめて手放すに至ったのではと思ったものです。このような次第でモトグッチリパラーレでは近年、整備履歴がわからない(ネットで中古車購入後など)インジェクション車が整備入庫した際は燃料フィルターと燃料ポンプは転ばぬ先の杖で交換することをお勧めしています。
ちなみにキャブレター車の場合フロートチャンバー内に微細なカスが若干溜まっているのを見ることはありますが、それが堆積して詰まりを生じてトラブルに至ったということは稀ではないかと思います。
そのかわりフュエルコックが詰まった事例はありました。コックの上についているフィルターが詰まったのではありません。フィルターを通り抜けた微細カスがコック内部に沈殿してガソリン流路を塞いでいました。
こういったトラブルを防ぐ狙いもあったのか、モトグッチの近年?のモデルのガソリンタンクは樹脂製になりましたが、金属製のタンクの場合は空にしておくのも錆びそうでなにか不安だし、かといってガソリン満タンにして長期放置してもいけないならどうすればっ?・・・・・大きなカスはフィルターが止めます。フィルターを通り抜けた微細カスはエンジンが動いている分には流れていって燃焼室に吸い込まれ、燃焼室内で燃えなくともエキパイを通って外に排出されるということが想像されます。しかし長くエンジンを動かさないとどこか溜まりやすいところに沈殿〜固着を繰り返し積み重ね、ガソリン流路や、それほど内部が狭いわけではない燃料ポンプすら詰まらせたのでしょう。つまり結局のところ適度な期間内に走ってガソリンを新しくするのがベストなのです。
そうは言っても、どうしてもご事情により長期保管しなければならないお客様はどうかご相談くださいませ。ちなみに最初に書いた私の発電機は、分解して極力内部のガソリンを抜いたあと、ガソリンタンクには乾燥剤でも入れておこうと思っています。
ところで 、
ガソリン満タンの話のついでに書きますが、整備でお預かりする車両がガソリンほぼ満タンであることがままあります。自動車整備業ですので仕方がないものの、工場内の総ガソリン量があまりに多いのも気味が悪いものです。ガソリンタンク満タンなのは恐らく最後に乗られたときに満タンにしてから帰宅して置いておかれたのだろうなあ?と推測しておりますが、たまにトリップメーターが2〜3kmということがあります。ああ、ご来店直前に入れたんだなあ〜(泣)と・・・・・。
整備の際はガソリンタンクをはずすことが多くあります。車検整備や12ヶ月整備のときは必ずはずします。その際満タンで重いタンクを落としてはいけないので、ガソリンを携行缶に移してから運搬しています。タンク落下、ガソリン劣化、こういったさまざまな要素から、不要不急のガソリン満タンは避けていただければ幸いです!
mas
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シールテープ
- 2020.05.05 Tuesday
- moto・・・・モトグッチ・整備など
以前からよく見かけていたのですが、フュエルコックの取り付けねじ部に巻かれたシールテープ。この部分からのガソリン漏れやにじみに対処したものでしょう。もしかしたらわりと一般化した手法なのかもしれませんが、はっきり言って間違っています。
画像の車体ではにじみが止まらなかったことがわかりやすくシールテープが変色しています。まあたまにこういった変色が無い、つまり結果的ににじみが止まっている車体もあることも事実です(ただしシールテープが効いたせいかどうかまではわかりません)。ただそれは幸運だっただけではないでしょうか。
ではなぜこのフュエルコック取り付けにシールテープを使ってはいけないのでしょうか。実はシールテープが有効かどうかはネジの形状によるのです。
手描きで申し訳ありません、上の図をご覧ください。
シールテープによるシーリングが有効なのはテーパーねじのほうなのです。図では4山のめねじに4山のおねじを差し込んでいくイメージです。黒い矢印は締めこんで行く方向です。テーパーねじは締め付けの序盤ではゆるゆるで、終盤にめねじとおねじの面がピタッと合うように作られています。その接触面積が広いので耐密性が高いのです。ただ隙間がまったくゼロというわけにはゆかず、そこを補助するのがシールテープなのです。
一方平行ねじ(一般的なねじ)は、めねじよりおねじのほうが少し細く作られています。考えてみてください、もしきっちり同じ径(もしくは極めて近い径)で作られていたら摩擦が大きすぎて入っていくことも困難なのです。適当な隙間があるのでするすると入ってゆき、ボルトあたまが着座するとボルトあたまの方向(矢印A)に引っ張られるので、めねじとおねじの片面(図では右側)が密着するのです。ただし、この図ではわかりやすく大きめに描いていますが、密着した面の反対側の面には隙間ができます。これを立体化するとらせん状の隙間(つまりらせん状の通路)となるので耐密性は期待できません。
ですので、平行ねじの場合はガスケットを使う必要があります。
上の画像はフュエルコックに使われているガスケットです。ナットの中で2つのパイプにはさまれています。燃料タンク側のパイプには正ねじが切られて、コック側のパイプには逆ねじが切られているのでナットを締めこんでゆくと2つのパイプがより密着してガスケットを強くはさむ構造になっています(この画像では上下ともフュエルコックのねじ部を撮っています)。この構造での漏れやにじみが出たときの正しい対処法は、「ガスケットを点検・新しくする」「ガスケットが接触するパイプ面に異常がないか点検・修正する」「ナットに割れがあったりねじが傷んでいないか点検・新しくする」となります。
もし、ガスケット・パイプ・ナットに異常があったら、いくらシールテープを巻いても漏れ・にじみは止まりません。上の図で説明します。
ナットを締めこむと左右2つのパイプ(タンク側とフュエルコック側)は矢印Bの方向にはさんだガスケットを圧縮しようとします。それによって耐密性が高まるのですが一方、両パイプのねじはナットのねじに矢印Cの方向に押し付けられるのでねじ山の反対側(図では内側)に隙間ができます。この隙間はテーパーねじのものよりも大きいので、もしガスケットなどに異常があってガソリンをシールできていなかったら、構造上シールテープを巻いたくらいでは対処できないのです。「ガスケット面でシールする」という、構造に即した対処をしましょう。
ちなみになぜこのフュエルコックに耐密性の高いテーパーねじを使わなかったのかというと、テーパーねじがキュッと締めてゆくほど耐密性が高くなる反面、適当なフュエルコックの向き(角度)で止まらない可能性が高いためでしょう。平行ねじならナットのみを回して締めこめるので、フュエルコックを任意の角度で取り付けることができるのです。
mas
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