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V65 再生記 <2>

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V65の作業はゆるゆると進んでいます。エンジンの分解をしつつパーツのチェック・・・・・いや、そもそも分解はパーツをチェックし、必要とあらば交換するためにするんですね。また、分解したら再利用はしない部品もあります。コンロッドメタルやコンロッドボルトなどがそうです。
 
たまに「腰下(シリンダーより下、クランクシャフトまわりを指して世でよく言われている表現)の整備は走行何kmくらいでやるんですか?」とお客様に聞かれることもあります。また私がこんなことをしているので「ヤラネバナラナイ」と強迫観念にとらわれてしまう方が出るかもしれません。
 
が、基本的には何kmでやらなければということはありません。もし異常を感じることがあればそれを解消するために着手すればよいと思います。エンジンはオートバイの心臓であり、エンジンの肝がクランクシャフトです。モトグッチはシンプルで頑丈なクランクシャフトを堅牢なクランクケースでホールドさせています。普通に使っていて、オイル管理等のメンテナンスをきちんとしていれば滅多に壊れるようなところではありません。
 
ちなみに数年前に私のカリフォルニアが走行10万kmを越えたとき、若干のオイル消費もあったので「いい機会だから」とエンジンの整備をしましたが、それでもヘッドのオーバーホールやピストン&リングの交換などシリンダーから上がメインで、「ついでに」コンロッドビッグエンドをばらしてチェックしましたが、何も起きていませんでした。(何も無くてもコンロッドボルト、メタルは無条件交換しました)
 
今回のV65は「使えるエンジン」ということで輸入しただけで、実際の状況は皆目わかりませんでしたし、「中身を新車のようにして」乗ろうと思いましたのでこのような作業をしています。


 
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さて、さも「やらなくてよい整備」かのように書いていますが・・・・・・・恐らくなにもないと油断していたらクランクシャフトのスラストメタルが潰れていました!!画像左側の半円形の部品です。
これはクランクシャフトが前後に動きすぎないようクラッチ側でクランクシャフトをホールドしている部品です。クランクケースとクランクシャフトをじかに接触させず、自身もオイルによって磨耗から守られている、はずなのですが、これは後ろ側が偏磨耗していました。ひょっとして前オーナーはクラッチレバーを握ったままでいることが多かったのか?この傷みようはもしかすると異物を噛んでいたのかもしれません。前段と矛盾しそうですが、やはり整備に無駄は無いものですね〜(笑)
 
画像右はクランクシャフトのメクラ蓋を外して、クランクピンのジャーナル内に溜まったスラッジを掃除しているところです。これはこんな時でもないとできない整備です。クランクシャフトジャーナル内をオイルに混じって通過していたスラッジが強大な遠心力で内壁にこびりついているので、これを掃除します。その後メクラ蓋にネジロックを塗布して組み付けました。


 
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これはオマケもいいところなのですが、こんな時でもないとできない作業をもうひとつやりました。ケース上部のリブに水抜き穴を開けたのです。お気づきですか?洗車のあとでなかなか消えない溜まり水・・・・・。ミッションケースにも溜まりやすい箇所がありますよね?
 
スタッドボルトは全て一度はずして、いざ組み付け時にはシール性のあるネジロックを塗布して再装着することになります。実はここからオイルが出てくることもあるのです。鋳造されたクランクケースに「す」ができていて、そこを通じてオイルがにじんでくるようです。最初は出ていなかったのに何年か乗っているうちに「す」が通じたのか、オイルが出てくることもあります。
 
「す」というのは鋳物の部品内部に残る小さなすき間(空洞・割れ目?)です。鋳造の過程のうちおもに冷却&収縮時にできるそうで、なかなかこれの発生をゼロにはできないそうです。
さきほどケースのリブに水抜き穴を開けたことをご紹介しました。あれは薄いリブなのでやりましたけれども、鋳物の部品にあとから穴を開たり加工するのはなるべく避けたほうがよいかもしれません。例えばシリンダーヘッドのツインプラグ化やオイルラジエーターの増設のためにオイルラインをあけるなどする際、潜んでいる「す」に通じてしまってそれまで無かったオイルにじみが発生した事例があると聞いたことがあります。なかなか難しいものですね。
 
クランクケースは塗装を剥がして塗りなおすつもりだったのですが思ったより地肌の傷みが無く、「このままでもいいかなあ?」などと・・・・・・・
いろいろ楽しんでおります(笑)


 
 
mas
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V65 イタリアから

すでに廃刊になって久しいトライアルジャーナルという雑誌をご存知ですか?トライアルはどちらかというと近畿圏のほうが盛んだったと思いますが、そのどちらかというとマイナーなトライアルを取り上げた雑誌でした。
 
トライアルはオートバイの趣味の中でも、たとえツーリングトライアルのようなレクリエーションであっても、どうしても実力を問われてしまうジャンルだと思っています。私もスペインMONTESAのトライアル車COTAを持っていますが、トライアルのスポーツ性の壁の前に挫折したひとりであります。(要はろくに練習もせず下手くそなままに終わったということです、笑)
 
話を戻しますが、トライアルジャーナルにかつて連載を持っていたイタリア人がいます。
Fabio Goffiさん、いち時期日本にいてアプリリアで働き、トライアルジャーナルで「FABIO先生のテクニカルニュース」という連載を持っていたそうです。(↓当時の写真)


 
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そのFABIO=ファビオさんがイタリアでV65のカスタム車を造りました。そして彼のご子息でフォトグラファー&ビデオグラファーのナオキさんが画像&動画をネットにあげていますのでご紹介します。

 
 
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https://www.youtube.com/playlist?list=PLjuBGDemBLNh_vDF44jarhRVsBBQvJeXW
 

カスタムの難しさは既製品(汎用品)で組むのと、ワンオフで造りあげるものとの差の大きさにあると思います。思いを具現化するにはやはり思い通りの造形を与えたワンオフで組むのが一番です。ファビオさんはタンク以外を作られています。
 
また弊社代表志賀のルマン1000も同様に思います。このアルミタンクはお金がかかってますよ!ちなみに「売る」と言っていますがどなたかいらっしゃいますか?(ただし身長170cmのライダーにジャストフィットするよう作られています。ので私は乗れません、笑)


 
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思い通りに造り上げるには、残念ながらそれなりの出費も必要になります。たまにカスタムのご相談もお受けしますが、既製品の組み合わせだけではやはり不十分で、また漠然と「やりたい」だけではなかなか達成しないのが現実であります。現在わたしもV65のカスタムを始めていますけど、資金難のためこれは妥協の産物になるでしょう。それでどこまでイメージに沿えるか楽しみではありますが・・・。
 
最後にナオキさんのWebsiteをご紹介しておきます。


https://naokigoffiproduction.wordpress.com/
 

対象はオートバイに限りません。美しい映像・画像が載っています。どうぞご覧くださいませ!!
 
mas

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V65 再生記 <1>

以前から650ccでやってみたいことがあったのですが、ひょんなことからV65フロリダの書類付きフレームを入手しまして、これを再生して乗ることにしました。


 
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フレーム入手から3ヶ月後、イタリアからエンジンやタンクなどが届いたのでフロリダもバラバラにして、とりあえず現在そろっているパーツを並べてみました。
 
もちろんエンジンやタンクは中古です(笑)。ことにあたってルマン1000を売却して再生資金を作ったわけですが、ざっと計算してみるとすでに資金枯渇必至!!中古で済む部分は中古でまかなう予定です。


 
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さあいよいよ、届いたエンジンのチェックからV65再生作業のスタートです。走行距離不明の650ccエンジン(V65SPのもの)なので、クランキングさせるのも、シリンダーヘッドをはずしてシリンダーを見るのも、正直ドキドキしましたが、若干オイル下がりの痕跡があるくらいでホットしました。
 
画像右下はピストンリングの合口すき間の計測の様子です。
シリンダーボトム付近でオイルリングの合口が1.1mm!!これは広いです。よくオイル上がりしませんでした。新品のオイルリングでは0.4mmと規定値内(0.20〜0.45mm)なので、ピストンリング交換のみとします。
 
シリンダーはあまり減らずにピストンリングが減る。ニグジル鍍金加工が施されたモトグッチのシリンダー、さすがです。(ニグジル=niguzil、ニカジルではありません。モトグッチ社がパテントを持つ技術です)


 
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V65のエンジンにはファーストシリーズとセカンドシリーズがあります。その判別はピストン燃焼室とシリンダーヘッドの形状を見ればわかります。画像のように楕円の燃焼室と、シリンダーヘッドのプラグホール中心からフィンまでの長さが59mmのものがファーストシリーズです。
 
そして、セカンドシリーズは真円に近い燃焼室形状になり、燃焼室形状変更にあわせてプラグが位置変更され、フィンまでの長さは53mmとなりました。
なぜ形状変更を???国産メーカーもよく使うというフレーズ、「機能向上のため」としておきましょう(笑)
 
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さて、こんな感じで始まりましたが、今回ボルト1本ベアリング1個に至るまですべて分解してきちんとしたうえで組もうと考えています。その全てをというわけにはいきませんが、経過をときどきご紹介しようと考えております。 
 
mas

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TEATRO LA GUZZI <2>

映画で出会えるモトグッチ 2(連載10回予定)
 
当劇場ではモトグッチが登場しているイタリア映画をご紹介しています。一部イタリアを舞台にした外国映画なども含まれています。画面をサッと横切るモトグッチを探して、イタリア映画を観てみませんか?
 
ざっとですが、以下のように分類してご紹介していこうと思います
 
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グルッポ アー (Gruppo A)主人公とからんでいるか、登場時間が多い
 
グルッポ ビ (Gruppo B)短いがそれなりにしっかりと写っている
 
グルッポ チ (Gruppo C)ほんの一瞬だけ
 
アルトリ(Altri)その他番外
 
あくまでモトグッチを中心にご紹介していきますので、イタリア映画論みたいな内容には期待しないでくださいませ!!なお、たぶんに個人的感想に基づくものであること、また若干のネタバレが含まれることをご理解くださいませ!! massi
 
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★グルッポアーから、50年前のローマを走るモトグッチ

「マンマ・ローマ」 (Mamma Roma) 1962伊
   ASIN: B00005HXWQ
   EAN: 4510242162375

監督 ピエール・パオロ・パゾリーニ
出演 アンナ・マニャーニ、エットーレ・ガロファーロ

マンマ・ローマと呼ばれる娼婦(アンナ・マニャーニ)は足を洗い、離れていた息子のエットーレ(エットーレ・ガロファーロ)と暮らし始める。二人でまともな生活をしようとするが、以前のヒモが再び現れる。

バラックの古道具屋街に置かれる110ccのトラック、アイアーチェにジゴロらしき姿など。タンクやホイールやスクーターに自転車も並ぶ。マンマ・ローマがエットーレに買い与え、二人乗りで走るのはジレラの150ジウビレオ。不良仲間はストルネッロに乗っている。
 
 
 
 
★グルッポビーからも、40年前のローマを・・・

「フェリーニのローマ」 (Roma) 1972伊
   ASIN: B0011GIELE
   EAN: 4988142633729

監督 フェデリコ・フェリーニ
出演 フェデリコ・フェリーニ

フェリーニの想い出のローマを少年時代の回想から現在(1972製作当時)の撮影風景まで、断片的なシーンをつなぎ合わせて描いている。

高速道路を撮影中に事故現場に差しかかると、V7ポリッツィアが登場する。他にシエナ広場の場面でファルコーネ。ラストシーンでは、深夜のローマを数十台のバイクが数々の名所を縫って疾走する。その殆どが並列2気筒・4気筒。首の白いマフラーが時代を物語る?
 
 
 
 
★グルッポチも、ローマが舞台

「アッカトーネ」 (Accattone) 1961伊
   ASIN: B00005HXWR
   EAN: 4510242162382

監督 ピエール・パオロ・パゾリーニ
出演 フランコ・チッティ、フランカ・パスット

ローマ郊外でヒモをしているアッカトーネ(乞食)(フランコ・チッティ)。ウブなステッラ(フランカ・パスット)に恋して真面目に働こうとするが・・・・。

鉄くずを運ぶモトキャリー。男3人に鉄くずも運ぶパワーは500ccのエルコーレのバリエーションモデルではなかろうか? 警察に捕まりそうになったアッカトーネは、4スト単気筒車を盗んで逃走する。
 
 
 
 
★アルトリからも、題材からして舞台はローマだと思うのですが

「ベリッシマ」 (Bellissima) 1951伊
   ASIN: B000CEVWNS
   EAN: 4523215006811

監督 ルキーノ・ヴィスコンティー
出演 アンナ・マニャーニ、ヴァルテル・キアーリ

映画の子役オーデイションに何とか自分の娘を受からせようと、マッダレーナ(アンナ・マニャーニ)が奔走奮闘する。あげくにコネで娘を有利にしようと家の購入資金の50000リラまで撮影所関係者のアンノヴァッツィ(ヴァルテル・キアーリ)に渡してしまう。が彼はそれを騙し取ってランブレッタを買ってしまう。アンナ・マニャーニの迫力おばさんっぷりは見事。
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TEATRO LA GUZZI <1>

映画で出会えるモトグッチ 1(連載10回予定)
 
当劇場ではモトグッチが登場しているイタリア映画をご紹介しています。一部イタリアを舞台にした外国映画なども含まれています。画面をサッと横切るモトグッチを探して、イタリア映画を観てみませんか?
 
ざっとですが、以下のように分類してご紹介していこうと思います
 
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グルッポ アー (Gruppo A)主人公とからんでいるか、登場時間が多い
 
グルッポ ビ (Gruppo B)短いがそれなりにしっかりと写っている
 
グルッポ チ (Gruppo C)ほんの一瞬だけ
 
アルトリ(Altri)その他番外
 
あくまでモトグッチを中心にご紹介していきますので、イタリア映画論みたいな内容には期待しないでくださいませ!!なお、たぶんに個人的感想に基づくものであること、また若干のネタバレが含まれることをご理解くださいませ!! massi
 
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★グルッポアーから、ちょっとせつないこの映画

「明日を夢見て」 (L'uomo delle stelle) 1995伊
   ASIN: B00LHCVTGY
   EAN: 4933672243818

監督 ジュゼッペ・トルナトーレ
出演 セルジオ・カステリット、テッツィアーナ・ロダート

1950年代のシチリア。撮影機材を車に積んだジョー(セルジオ・カステリット)は、映画の新人オーデイションだとして1500リラの手数料で人々を撮りながら島中を周っていた。彼の前に明日を夢見る少女、孤児のベアータ(テッツィアーナ・ロダート)があらわれる。

冒頭、真っ赤な車体にフィッシュテールマフラーはGTVかアイローネだろうか。また広場でジョーの言う事に驚き立ち止まる人々。GTVサイドカーも慌ててエンジンを切ってしまう。他の場面でも数機種。自転車屋の前で修理する姿も。


★グルッポビーからは、コミカルなこの映画

「カサノヴァ 70」 (Casanova 70) 1965伊
   ASIN: B00005HBEX

監督 マリオ・モニチェッリ
出演 マルチェッロ・マストロヤンニ、ヴィルナ・リージ

変わった性癖を持つNATO軍少佐アンドレア(マルチェッロ・マストロヤンニ)が次々にトラブルを引き起こす、艶笑コメデイ。

シチリアに赴任したアンドレアが、娘に手を出して追われる。追っているのはアイローネか?。シリンダーヘッドは1948以降のカバードタイプのようだが、ガーターフォークを付けている。4人乗りで走って自動車に激突する。他に軍用車両も登場する。


★グルッポチからは、珍しい車種が見られるこの映画

「ミラノの奇蹟」 (Miracolo a Milano) 1950伊
   ASIN: B000TLYCTU
   EAN: 4988182110181

監督 ヴィットーリオ・デ・シーカ
出演 フランチェスコ・ゴリザーノ、エンマ・グラマーテイカ

ミラノ郊外のキャベツ畑でおばあさん(エンマ・グラマーテイカ)に拾われて、孤児院で育った人の良いトト(フランチェスコ・ゴリザーノ)。貧しい人々と共に生活を始める。土地の所有者は私兵を繰り出して立ち退きを迫るが、トトは奇蹟を起こし始める。

第2部以降。私兵が乗るアンダーガード付きの単気筒。アイローネかひょっとするとアイローネ・ミリターレかも。小さく白煙を残して走るモトレジェッラ65の姿は貴重。ミラノ市街、信号待ちでニュートラルを出してる姿もモトグッチ?


★アルトリからはとても楽しいこの映画

「踊れトスカーナ」 (Il Ciclone) 1998伊
   ASIN: B0009Y29DS
   EAN: 4959241943262

監督 レオナルド・ピエラッチョーニ
出演 レオナルド・ピエラッチョーニ、ロレーナ・フォルテーザ

フィレンツェ近郊のレヴァンテ(レオナルド・ピエラッチョーニ)の家にカテリーナ(ロレーナ・フォルテーザ)らフラメンコダンサー達がやって来て、田舎町は大騒ぎになる。レヴァンテの足として出てくる愛車モトベカーンの運命と共に事の顛末を描く、笑えて楽しい映画。
 
 
 
 
PS:なにかしら画像も用意しようかと思いましたが、ぜひスクリーン上でモトグッチを探していただきたく、テキストのみでご紹介させていただきます
 
mas
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オイル管理

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少し前ですがBREVA750がファイナルケースからのオイル漏れで運び込まれました。少し前に他店で修理したのに・・・・というお話を踏まえて、オイルシールの交換とともに入念にチェックしました。
 
案の定、ボールベアリングが傷んでいました。オイルシールが新品なのにオイル漏れする・・・・・・ベアリングの磨耗により振れが起きるためにオイルシールのリップが押されてオイルが漏れるというパターンもあるのです。
 
度重なるオイル漏れはファイナルケースの内圧が上がるからだ、と新たにベントを設ける方もいるようですが、上記の点も考慮していただけたらと思います。ちなみにBREVA750、V7、イモラ系などのファイナルケースは独立していて容積が小さいのでベントが設けられていますが、ルマン系などはファイナルケースとスイングアームのトンネルが通じているので容積が大きく、内圧の変化に対応できています。


 
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そして、ケース内はご覧の通り、尋常ではない汚れ方をしています。錆が発生したあとと見受けられました。エンジンに比べファイナルケースのオイル管理は軽視されがちのようですが、きちんとしていないとベアリングの早期磨耗を招いたり、こうした錆の発見が遅れたりします。
 
ギア面には高いストレスがかかるのに、ギアオイルではなくエンジンオイルとおぼしきサラサラなオイルが入れられていることもありました。
 
そして上画像のピニオンシャフトを触ってみると・・・・・・


 
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ベアリングの異常磨耗が進んで、スラスト方向にガタが出ていました。画像から、動いているのがわかりますか?
  
外見上は単純なオイル漏れでしたが、実際の症状は重く、オイル管理の重要さがよくわかる事例となりました。
 
mas

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カムギアトレインというもの

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中古のV10チェンタウロです。このほど買っていただいたお客さまが、以前からお付き合いさせていただいていた方だったこともあり、ひとつお願いをさせていただきました。それは以前から気になっていたチェンタウロのメカノイズを減らす方法のテストです。実は何台かのチェンタウロで年々メカノイズが大きくなっていくのを目の当たりにして長く気に病んでいたのでした。
 
チェンタウロあるいはデイトナのアイドリング・低回転時に発生するガッシャガッシャガッシャガッシャというメカノイズの源はオーバーヘッドカムシャフトを駆動するために、従来のカムシャフトがあった場所に位置するアイドラーシャフトを回すギアトレインにあり、ノイズが徐々に大きくなっていった原因はこのギアがアルミ合金(以下アルミ)で作られていたことにあります。
 
以下、このエンジンにおいてアイドラーシャフトに組みつけられたギアはアイドラーギアとでも言うべきなのでしょうが、他機種エンジンとの比較上、この稿では総じてカムギアと書かせていただきます



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この画像は以前持ち込まれたルマン3に取り付けられていたアルミカムギアセットです。よく歯面を見ていただけたら荒れているのがわかると思います。いっとき一部でもてはやされたこの部品ですが、ご覧の通り耐久性はありません。
 
とある自動車メーカーのエンジニアから「アルミのギアを使える場所というのは、プラスチックのギアでも済むような場所」と教えていただいたことがあります。アルミカムギアを着けた方は一度チェックされてはいかがでしょうか?磨耗が進んでいたら、外したチェーンスプロケットをお持ちだと思いますので戻せばいいのですが、その際はチェーンとチェーンテンショナーはぜひ新品を使ってください。



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さて、最初の画像にあるタイミングベルト・プーリー・ベルトハウジング・カバー等々をはずしていくとギアが現れます。左画像の真ん中に位置するのがクランクギアですが、耐摩耗性をあげるためにここにはアルミを使っていませんので、前述のアルミ対アルミの社外品カムギアトレインよりはだいぶマシになっています。

ギアをはずすと右画像のようになります。上部のギアのようなものはアイドラーシャフト(OHVエンジンにおけるカムシャフトの位置)に取り付けられていて、これと左シリンダーの前にあるセンサーによりエンジンの回転位置を検出しています。



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タイミングチェーンを組み付けました。

チェーンは伸びが生じるのでカムギアトレインのほうが有効・・・・などと言われていたような覚えがありますが、ギアにアルミを使うならそれは大きな間違いです。チェーンは確かに伸びます。ですが実際にチェーンの伸びがエンジンの作動に影響するのはクランクスプロケットとカムスプロケットのあいだに位置する、上の画像で言えばわずか5ピン分なのです。もちろんチェーンの伸びやチェーンテンショナーの張力の程度に左右されますが、そのあたりがきちんとしているならば磨耗が進んで音が出るようなアルミ製ギアによる誤差に比べたらわずかなものであると言えます。
 
たしかに一般のオーナーさんの印象としてもギアトレインのほうがメカニカルにそして高性能に見えるでしょう。ですがやるならばモトグッチもかつて初期のV7Sportに使っていたようなスチール製のカムギアにするべきでしょう。



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タイミングカバー・プーリーなども取り付けて、ベルトを張りました。
もうひとつあらためて書いておきたいのは、このシステムがヘッドのカムシャフトを駆動するものだということです。
 
カムシャフトは回転を与えられてカム山によってバルブを押すわけですが、カムの頂点を越えたあとはバルブスプリングの反力によってカムが押し戻されるため回転速度が増します。スムーズに回っているように見えて、実はカムシャフトの回転は脈動しています。ですからカムギアの歯面は順方向ばかりではなく逆方向のストレスも受けているのです。最初に書いた「低回転時に発生するガッシャガッシャガッシャガッシャというメカノイズ」はこの歯面両面の磨耗が進んでバックラッシュが過大になったためだと考えられます。またアルミ製であるがゆえに音がより響いていることも考慮すべきです。



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いざ完成したチェンタウロ、エンジンをかけてみると「ドゥルルルルル」と迫力はそのままに落ち着きのある期待通りの音になりました。今回の整備はこちらがお願いしたことなのでリパラーレの負担になりましたが、出費以上の成果を確認できてよかったです。現在このチェンタウロは納車を待つばかりとなりました。
 
ちなみに、チェンタウロやデイトナののちに発売されたコンペティションモデルMGS01では、実はカムギアではなくチェーンが装着されています。モトグッチ社でもアルミ製カムギアのデメリットが確認されたのでしょう。そもそもモトグッチ社は長い経験の中で、やって良いこと悪いことの蓄積があるメーカーだと思っています。デイトナ開発のころモトグッチ社は不調を打開すべく社外のアイデアを取り入れたりと努力をしていたのですが、もしかして古きエンジニアの意見をあおぐちょっとの余裕が無かったのかな?などといらぬ想像を巡らせています。

*この稿の内容についてはテクニカルレポート12で図解とともに解説していますので、そちらもぜひご覧ください。 
 
mas

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新年あけましておめでとうございます。

謹賀新年

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新年は5日(月曜)より平常通り営業致します。


RIPA-Shiga
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Buon Natale

*MOTO GUZZIご愛用の皆様各位

今年もお蔭様で営業を続ける事が出来ました、お礼申し上げます。



2014 New Year Holiday.JPG
ベルリンでのNORGEのポリス仕様です。

今年の反省はこのブログの記事が少なかった事です。
2015年は数多くの記事を掲載致します。
乞うご期待?

2015年も宜しくお願い致します。

RIPA-Shiga
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SPINAフレームに関して

初めて整備をさせていただくお客様のSport1100が立て続けに入ってきましたのでちょっとご案内させていただきます。

DAYTONA1000から採用されたこのフレームの腰まわりの部分。このサイドプレートの取り付けボルトは必ず換えることにしています。初期のテーパードボルトを使用しているものでは交換できないのですが、それ以降ならステンレスのキャップボルトに換えています。というのは純正のボルトは恐らくサイドプレートから突出させないように頭が薄くてすむ6mmのヘキサゴンレンチで締めるタイプを使っているのですが、それでは10mm径のボルトをきっちり締めるにはトルクを上げづらいため、リパラーレでは8mmのヘキサゴンレンチで締められるボルト(尚硬度のあるステンレスボルト使用)に換えるのです。


 
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このフレームはかつてDrジョンが走らせたレーサーをベースにしていますが、やはりメーカー開発とは異なり熟成が足りなかったようで、初期のものは走らせると「どこに行こうとしているのか!?」と一抹の不安を感じさせたのが正直な印象でした。
そして市販後徐々に改善されていきます。下記スポーツモデルの変遷参照
http://www.motoguzzi-jp.com/technical/modella_s/modella_sportivi.html
フレーム図(初期)
http://www.motoguzzi-jp.com/technical/modella_s/ka_frame.html
このサイドプレートですが、アルミ製であり、かつステアリングヘッドと等しく重要なスイングアームピボットを保持する大切なパーツです。きちんと締め付けて剛性を保つ必要があります。
が、多くは緩んでいます。通常ボルトはメーカーラインでの組み立て時にトルク管理をされていますが、金属の縮み、ボルトの伸び、ワッシャーのへたり、塗装の縮みなどの複合的要素により緩みが生じていると考えられます。(言わば緩み状態です。ナットが緩んだわけではないことがおわかりでしょうか?)ですから納車段階から増し締めと、叶うならばご紹介したようなボルト交換も必要です。

特に一番上に位置するボルトはエアクリーナーケースを外さないとナットにスパナがかかりませんので、そこらへんがきちんと増し締めが施されていない原因かもしれません。ですがそれを面倒と忌避してはいけません。どうか整備業者にこの点をご依頼・ご指摘ください。ご不安な方は他所で買われた車輌でも構いませんのでお持ちください。

ちなみに増し締めの基本ですが、必ず一度緩めてから締めなおしてください。

mas

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