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一方、EXバルブは、燃焼上死点後122度(カムシャフトでは61度後)言い換えれば、下死点前58度(カムシャフトでは前29度)で開き始めます。(INバルブと同様、実際には発表数値より早く開き始め、発表数値より遅く閉じます。)

 EXバルブのクリアランス設定にバルブタイミングの直接の影響はありませんが、燃焼排気ガスに直接さらされていますからINバルブよ
り熱膨張が大きく、バルブクリアランスを大きく設定しなければなりません。
さらにLe Mans 1000 は850 Le Mansよりバルブ径が大きくなった(37.0mmから40.0mmへ)事により受熱面積が大きく、当然850 Le Mansよりも熱膨張は大きいのです。 バルブステム部やプッシュロッド等が熱膨張する事により、エンジンデザイナーが考えたバルブタイミングよりも早く排気を始めてしまったり、バルブプランジャーからバルブアジャストスクリュー間のクリアランスが無くなる事によりバルブが完全にバルブシートに密着しなくなり、エンジンが不調となりトラブルを発生します。 かといってバルブクリアランスを大きくしすぎるとバルブノイズと共にバルブ作動角が小さくなり、本来の性能を発揮できません。

つまり、ベースサークル径を小さくする事によって、リフト量を増やしてバルブ作動角を大きく取ったカムシャフトは純粋なベースサークル円周距離が少なくなりますので、緩衝部分を含める事と圧縮上死点前の燃焼開始時に熱膨張を考慮してバルブクリアランスを大きく設定しなければならなくなります。 こうしてLe Mans 1000 のバルブクリアランスが決定されました。


Fig.3

* V11 Sport / Sport 1100 のカムシャフト [INバルブ作動角ー256度(中心角ATDC106) EXバルブ作動角ー256度(中心角ATDC104)]

バルブクリアランス----IN:0.10mm / EX:0.15mm (Sport1100--USA仕様 IN:0.05mm EX:0.05mm)
バルブタイミング------IN/open:22 BTDC--close:54 ABDC EX/open:52BBDC--close:24ATDC
(オーバーラップ46 度)--バルブ開度1.5mmの時のクランク角度を表示しています。



V11 Le Mans / Sport 1100 のカムシャフトは850 Le Mansの変更型ではなく、バルブノイズ減少までも考慮した新設計です。(Fig.3.三種camshaftをご覧になればその違いがお判りになると思います)これは、ベースサークル径を大きくしカムの円周距離を大きくとり、又バルブ作動角を少し狭くする事によりバルブプランジャーの作動に充分な緩衝距離が取れるようにしました。

その結果、より繊細なバルブ作動の為のカムプロフィールをデザインする事が出来ました。バルブクリアランス設定にシビアなところがなくなりバルブクリアランスを小さくする事が出来た為、静かなエンジンを得ました。

最後に整備上の注意点ですが、
バルブクリアランスを、基準より小さく調整した場合はエンジン温度が高くなった時にバルブがバルブシートに密着出来なくなりパワーの低下を招きます。 一番感じやすいトラブルの兆候としてはエンジン温度が上昇するに従いアイドリングが利かなくなりますし、最悪の場合は稀にオーバーヒートを起こす事があり、 又バルブの熱がバルブシートを経てシリンダーヘッドへの熱伝導が悪くなりバルブトラブルを起こす事もあります。
しかし、バルブクリアランスが、0.0mmに近い程小さくなってもピストンとキスする事はありません。 一方、バルブクリアランスを基準より大きく調整した場合は、バルブノイズが過大になると共に バルブ作動角(開弁時間)が狭くなりエンジンデザイナーの目指した性能を発揮出来なくなってしまうのです。
その為、我々整備士は、エンジンデザイナー が決定した整備基準の数値を確実に守っていかなければなりません。。

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