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■最後に、一部の量産車やレーシングエンジンに採用されている
タイミングギヤトレインです。

 fig.18は某国産F-1エンジンのギヤトレイン図です。タイミングギヤによる動弁系駆動は前述の”カムシャフトのギクシャク”は発生しません。勿論、カムシャフトは周速度の不規則なストレスを受けていますので、各ギヤの噛合いのバックラッシュの範囲内で歯面の接触面が駆動方向・反駆動方向と変化を受けますがバルブタイミングにタイミングチェーン程の影響を及ぼす事はありません。

 初期型V7Sportのヘリカルギヤによるタイミングギヤを装着したくなりましたか?ここからは、MOTO GUZZIに関する”タイミングギヤ”に付いて述べさせていただきます。

 動弁系駆動で、クランクシャフトからコクドベルトプーリーのアイドラーギヤにアルミ合金を使用する設計は初期型のDAYTONA1000に見られましたが、後年コンペティションモデルとして市販されたDAYTONA1000のエンジンをベースしたMGS-01はクランクシャフトからコグドベルトプーリーのアイドラーシャフトまでの駆動をタイミングチェーンに変更して発売されました。さて、何故でしょう?
[●fig.3 & fig.20a/20b MGS-01]



 社外部品ですが、MOTO GUZZI用タイミングギヤにスパーギヤやヘリカルギヤまたはギヤモジュールの異なる数種類の「アルミ合金製タイミングギヤセット」なるものが販売されているようですが、その中には、バックラッシュが大きくギヤノイズが大きいものが数種類見受けられます。

 エンジンデザインの常識ではアルミ合金製ギヤを使用する場合はプラスチック等の合成樹脂製ギヤを使用できる軽荷重の運転をする場合のみです。(実際にはアルミ合金製ギヤはノイズが大きいので合成樹脂製ギヤを使用するのが常識的です。)合成樹脂製ギヤのタイミングギヤに薦めているのではありません。

 この材質では強度不足です。合成樹脂製ギヤは模型のモデルカー等に使用すれば良いのです。MOTO GUZZIに実際に装着されていたアルミ合金製タイミングギヤをチェックした事がありますが、ギヤの歯面接触部に数多くのピンホールが発生していましたし、ギヤの歯面の横には僅かですがめくれが発生していました。またアルミ合金の特性として熱による温度上昇により剛性が低下しますし、熱膨張率が高くギヤの温度が上昇するとバックラッシュの変化が懸念されます。

 つまり、我々はアルミ合金製タイミングギヤはレース等の短期間の使用ならば未だしも一般の使用に供するには特殊な短期定期交換部品と考えています。現在使用されているオーナーの方は短いサイクルのオイル交換をお勧めします。

 ところで1990年頃迄のモデルはカムチェーンを潤滑したオイルは直ぐにオイルサンプに戻るようにケースに4箇所の穴がありましたが、1990年以降のモデルでは3箇所の穴が無くオイルポンプ付近にオイルが溜まるようにしてあり、積極的にカムチェーン付近の潤滑量を増やしています。

 どうしても、アルミ合金製タイミングギヤを使用したいオーナーの方はその穴をふさいでみるのも一考かと?[fig.20bと比較してご覧下さい]

 さて、もし新たにMOTO GUZZI用にタイミングギヤを最適な材質で製作するとなると、えらくコストが掛かりそうですね。量産車として考えればカムシャフトの駆動はやはりチェーンでしょうか。?

参考文献 :日本のレーシングエンジン(株)グランプリ出版 :究極のエンジンを求めて


   

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