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 クランクシャフトは回転していますから常に回転遠心力を受けています。又、コンロッドビッグエンドはクランクシャフトのクランクピン部でつながり回転運動をしていますが、スモールエンド部はシリンダー中心線付近(ピストンピンはピストンセンターから僅かにオフセットしてあります)を上下運動をしています。(参考Technical Vol.04)

  スモールエンド部はピストンピンによりピストンとフローティングジョイントされています。スモールエンド部とピストンは上死点と下死点ではピストンが上昇行程から下降行程へ変わる時、又、下降行程から上昇行程へ変わる時一時的に停止します、即ちピストンストロークの上下死点では作動速度は0で中間付近では最大移動速度となります。 よくエンジンの性能を比較する時にピストンスピード[例えば14.5m/sec] 等といいますが、これは平均ピストンスピードで、実際の最高ピストンスピードはピストンストロークの中間付近がより高い値となります。この様にコンロッド部はピストンと共に非常に大きな加速度を伴なった上下運動をしています。 
  ピストン下降時はクランクシャフトを回転させエネルギーを得てますが、限界回転付近での上昇行程では特に高加速度で作動し、ピストンやコンロッド等を含めた質量が引張り荷重となり、コンロッドキャップをクロージング[Fig.3]させたりピストンピン部を損傷させたりします、これを防いでるのが圧縮上死点付近での燃焼圧力なのです。この燃焼圧力により上昇加速度を受止めピストンは下降行程へと向かわせます。 

これで、先ほどの某自動車メーカーのトラブルはスパーキングミスにより圧縮上死点付近での燃焼圧力が受けられず破損したものと考えます。ただ、4ストロークエンジンはもうひとつ排気行程の上昇行程がありますので、この排気行程ではトラブルが出ずエンジンは頑張れるのですから、1回のスパーキングミス等で直ぐトラブルが発生するのではなく複数回このような事を経験し金属疲労を起こし損傷したと考えられます。
[参考図Fig4]



 さて、V11Sport はスパーキングミスを起こしコンロッドトラブルが発生したのでしょうか?
 賢明な皆さんはオーバーレブ(過回転)を経験されて無いでしょうが、一般的にインジェクションモデルにはエンジン回転がレッドゾーンにはいるとバルブシステムがバルブジャンプやバルブサージング等のトラブルを発生させない様に、ECU がイグニッションコントロールし”間引点火”をして回転の上昇を防ぎます。 そうです、この”間引点火”が先ほどの”スパーキングミス”に相当すると私は考えています。

 それでは、どの様にして破損に至るのか?------先程説明しましたがコンロッドは上昇ストロークの度に上昇加速度を受け[Fig.4]、コンロドキャップがクロージング[Fig.3]と言う応力を受けています。オーバーレブによる”間引点火”やスパーキングミスによる燃焼圧力が受けられない時が”頻繁に起きます”とコンロッドキャップの変形を起こしベアリングメタルが潰され遂には正常なオイルクリアランスを維持できなくなり、オイルフィルムを形成出来ずに金属同士が直接接触して瞬く間にキャップスクリュー等の折損を起こし最悪の場合はコンロッドがクランクケースを打ち破りオイルを撒き散らしてエンジンは息を止めます。-----これはMOTO GUZZI に限らずどのエンジンにも起こりうるトラブルです。

 それでは、Daytona1000/1100Sport Inj. もインジェクションモデルなのに上記のようなトラブル(リコール問題)は無いようですが、それは、--------??
ギヤレーションの違いと思います、Technicaj Vol.07で解説していますが、V11Sport は他のモデルよりギヤ比が低いのです。
 つまり、同じ速度ですとV11Sportは常に高い回転でエンジンが回っていますので、Daytona1000/1100Sport/LeMans1000 等と同じように加速しながら走行するとV11Sportは早くレッドゾーンへ達します。 つまり、V11Sportは他のモデルより数多くのイグニッションコントロール”間引点火”の洗礼を受ける可能性があります、注意が必要です。------皆さんタコメーターのレッドゾーンマークは”飾り”ではありません。

    

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