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■カムシャフトの回転が一定速度でないことを
ご理解いただいたと思いますが、その”カムシャフトのギクシャク”を
どの様に抑制するのでしょうか?

 クランクシャフトのトルク変動に対処する為にレシプロエンジンにはフライホイールが装着されていますが、某ドイツ製四輪車には”カムシャフトのギクシャク”を抑える為にカムシャフトにフライホイール効果とダイナミックバランスを得るようにオフセットしてある部分があります。又、MOTO GUZZI社の創業者の一人であるCarlo Guzzi氏がデザイン した最後のモデルと云われている1956製 LODOLAのカムシャフトも、フライホイール効果を得る為に大きな円盤が装着されています。
[●Fig.6a/6b]


 1950年代当時の日本製MCには未だこのような考えに及んでいなかったようですが、我々が良く知るVツインMOTO GUZZIの場合はカムシャフトのスプロケットとタイミングカムチェインの慣性質量がフライホイール効果を得ていますが、しかし、これだけでは充分ではありません。

 皆さんは後輪駆動車のチェーンがリヤホイールを駆動するときに上下に揺れているのをご存知だと思いますが、このような事がエンジン内部のタイミングチェーンでも起きています。この現象は先ほどの”カムシャフトの周速度の変化によるギクシャク”と相まってバルブタイミングを変化させてエンジンの作動において悪影響を生じさせます。 このタイミングチェーンの不要な動きを抑える為に今までデザイナーはどの様な事を行ってきたのでしょうか。
[●fig.7a]

 日本製MCの初期の4ストロークエンジンではタイミングチェーンの反駆動側であるクランクシャフトとカムシャフトの両スプロケット間にタイミングチェーンテンショナーと称するローラーでチェーンを押さえつけて振れを抑えていました。しかし、高速回転をすると損傷する事が多く、某有名チューナーもCB77やZ-1当時にはローラーを金属製にしてみたりして苦労をされていたようです。

 なぜならローラーで押されている部分は振れを抑えられていますが、ローラーとクランク側スプロケット間とローラーとカムシャフトスプロケット間では、やはりタイミングチェーンに振れが発生しているからです。 現在でも通常使用において経年変化によりローラーが損傷しタイミングチェーンノイズが発生したMCを数多く見る事が出来ます。


   

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